奈良は"発掘のしがい"のある場所――。プレゼン交流イベント「PechaKucha Night NARA」シティオーガナイザー吉本圭輔さん

ペチャクチャナイト奈良シティオーガナイザー吉本圭輔さん

 

あなたは、20枚のスライドを1枚あたり20秒使ってプレゼンテーションを行うプレゼンテーションイベント、「PechaKucha Night(ペチャクチャナイト)」をご存知でしょうか?

PechaKucha Night NARAロゴマーク

 

このイベントは、東京を拠点に活躍する建築デザイナー、アストリッド・クライン氏(Astrid Klein)マーク・ダイサム(Mark Dytham)が、2003年より六本木で始めたことがきっかけで誕生しました。

誰もがプレゼンテーターとして参加でき、発表のテーマも自由。現在では、世界1000以上の都市でイベントが行われています。

 

 

実は、奈良でもこれまでこのイベントが開催されています。

奈良市内ナラニクルでのイベント風景

集合写真

 

このイベントを運営するため、シティオーガナイザーとして活動しているのが、吉本圭輔さん、36歳。

吉本さん

ふだんはコピーライターの仕事をされています。

 

6月16日(土)に天理でPechaKucha Night NARAを開催されるということで、吉本さんに取材をしてきました!

JR奈良駅前で吉本さんと待ち合わせ

JR奈良駅前で吉本さんと待ち合わせ。そこから奈良公園へ移動。

 

興福寺付近

鹿だらけの奈良公園

吉本さん

吉本:鹿めっちゃいますね。(笑)

 

 

木陰でインタビューを開始

 

――よろしくおねがいします。吉本さんは北海道出身なんですよね?

 

吉本:はい、北海道で生まれて、ずっと水泳を3歳から続けて19歳までやってたんです。高校受験とかも水泳でいったようなもので、たまに全国に行ったりもして。

 

ある大学からスポーツ推薦で「うちに来てくれないか」と誘われた時に、母親に「あんた人生の中で受験しないで終わるの?水泳で食ってくの?」って言われたんです。

それで、受験を決意するんですけど、高3の夏くらいまでは水泳しかやってなくて、案の定落ちるわけですよ。

目標だけは高くて、その時は名古屋大学の航空宇宙工学科っていう所にいきたかったんです。でも模試とかではE判定。

予備校に通って浪人生活を送りました。でも次の年もダメで。他の私立大学ってなると、僕の中でどこも差はなかったんで、関西の大学に受かって、渋々関西に出てきたっていう感じですね。

 

 

吉本さん

 

――そういう流れで関西に出てきたんですね。

 

吉本:そこから大学生活をしていくんですけど、やっぱり勉強が何か自分の中ではしっくり来なくて。2回生の後半から授業に行かなくなって、授業中とかも大体グラウンドにいてサッカーを見てました。3回生になって、ちゃんと将来を考え始めたんです。

それで1年間休学して、レストランのホールスタッフをしました。

休学している時に、やっぱり自分は大学を出て、その時学んでいた設計とか理系のメーカーに勤めても続かないっていう結論に至ったんです。それで「大学辞める」って親に言ったんですよ。そしたら大反対くらいまして。

「3回生までいってるんだから、後1年我慢してとりあえず大学卒業しろ、高い学費も出してるんだし」って。でも最終的には大学を辞めることを認めてくれました。

大学を辞めてから、興味持ったのが心理学でした。「心理学を独学で勉強してみよう」っていうことと、あと、天気予報見てるのが好きだったので「気象学も独学で勉強しよう」って思って。勉強していきながら、気象予報士関係の会社をエントリーしました。

また、「心理学を仕事にしていく」って考えた時に、心理学者とかよりも、楽しみながら仕事ができそうな所を考えて、「広告だ!」って何となく思ったんです。

 

 

 

 

 

 

吉本さん

――そこで今の仕事の「広告」と出会うわけですね。

 

吉本:当時、ポッキーでガッキーがCMで踊ってる時とかがあって。「あ、こういうの作れたらいいなぁ」とか思ったんです。あと、ドンタコスのCMとか。

就活して、気象予報の会社と広告制作の会社1社ずつが「うちに来てもいいよ」って言ってくれたんですよ。そこで気象に行くか広告に行くかって分かれ道になるんですけど、最終的には面接の時の印象で、広告の人の方が楽しそうだったのでそっち行こうと思って。

当時の「リクルートメディアコミュニケーションズ」っていう会社で求人広告を作るディレクターとしてスタートしました。

 

 

 

吉本さん

――働き始めは苦労しませんでしたか??

 

吉本:リクルートに入って、雑誌を作っていました。でも僕は「こんなん作れたらいいなぁ」っていう興味ぐらいで入ってきた人。他の同期みたいに「広告のこの分野でこういうことやりたい!」っていうのがなかったんです。
2年間は求人広告で、2年間はブライダルのゼクシィを作りました。

求人広告の方は、個人の飲食店から中小企業の社長さんまで、幅広い世代・キャリアの方の取材をするんですよ。取材でその会社やそこで働く人のことをよく知って、自分でコピーライティングやデザイン、写真撮影もしました。一通り全部出来たのが、今の仕事のベースになったと思います。

また、人はみな違うという前提に立って取材をしていくので、取材した1人1人に、「なんでそこで働くようになったんだろう」とか、「今何が楽しんだろう」みたいなことを知れたのが良かったなぁと思います。

 

吉本さん

――ゼクシィってCMでもよく流れてて有名ですよね。どんな仕事をしてたんですか?


吉本:リーマンショックがきて求人がガタッと落ちて、ゼクシィで仕事をすることになるんですけど…。そこでは、1人1人を掘り下げるっていう仕事とちょっと違って、そこはあんまり自分の中でヒットしなかったんです。

広告の対象がヒトからモノに変わったので、無味感想的な感じというか。その時は、なんとなく前の仕事に戻れたらいいなぁと思ったり、転職も考えていました。

ただゼクシィにいて1つ良かったのは分業になるっていうことでしたね。タウンワークやフロム・エーの制作と真逆で、チームで作っていく経験をできたんでその点は凄い良かったなぁと思っていますね。

そして転職して、コピーライティングを軸においている会社に行くことになって。言葉を考えること、磨いてくことが面白いなぁと思いました。そこで初めてコピーライターを意識しだしたんです。その時30歳でした。

 

 

 

「キャッチコピーが上手くなるためにはどうしたらいいですか?」と質問したら、「いろんな世代の人と飲みに行け」という回答をいただいた

吉本さん

 

――コピーライターって"世界は誰かの仕事でできている"みたいな表現を作るものですよね。むずかしそうなイメージがあるんですけど、どうやってチカラをつけていったんですか?

 

吉本:山本高史さんという方が開いてるコピーライター養成講座に参加した時、「キャッチコピーが上手くなるためにはどうしたらいいですか?」と質問したら、「いろんな世代の人と飲みに行け。」と言われたんです。

その時は、はっきり意味は分からなかったんですけど、なんとなく、求人広告で働いていた時思っていたことと繋がって、人のことをもっと知っていったら自分の言葉を磨くことができるのかなと思いましたね。

この講座に参加してからコピーライターを本格的に仕事にしようと考えるようになりましたし、人との向き合い方が変わりました。

自分で「直接体験」をすることや本や映画を見て「疑似体験」をすることに意識して時間を使うようになりましたね。

 

吉本さん

――コピーライターの仕事で「これはうまくやれた」っていうエピソードは?
 
吉本:100人ぐらいの人から話を聞いて、今後の方向性を一言でまとめるという仕事があったんですけど、100人のバラバラな意見を1つにまとめた時の達成感はコピーライティングの面白さの1つかなと思います!

客観的に見てみんながどの方向に向かって頑張っているのかを分析して、社会的な意義に落とし込んで言葉で表現できるようになったのはすごく良かったと思うし、それが自分でも一番のやりがいかなと思いますね!

 

 

 

奈良っぽいスタイルのPechaKuchaをつくりたかったから初開催まで他の県のPechaKuchaは見なかった

吉本さん

――なぜ吉本さんはPechaKucha Nightを奈良でやることにしたんですか?

吉本:ぼく実は他の県のPechaKuchaを見ないで奈良で開催したんです。もし見てしまったら同じようなスタイルでやってしまうと思ったんですよね。プレゼンのルールと、だれがどんな内容を話しても情熱さえあればいいということだったので、そこに奈良っぽさを出していれば大丈夫だと思っていたんですよ。

きっかけは、PechaKucha Night OSAKAでオーガナイザーをやっている岡田浩徳さんと奈良でいろんなイベントを一緒にやっていく中で、「奈良でPechaKuchaを立ち上げてくれませんか?」という話をいただいたことですね!

 

 

 

 

奈良に知り合いが多くなかったので面白い人や頑張っている人を探すのに苦労した

吉本さん

――これまでイベント開催などで苦労したことはどんなことですか?

 

吉本:いろんな分野の人をイベントに呼んで話してもらおうと思っていたんですけど、僕は奈良出身ではなくて、奈良に知り合いがそれほど多くなかったんです。仕事上の付き合いのある人以外で奈良で面白い人や頑張っている人を探すのはとても苦労しましたね。

テレビに出てるような有名人じゃなくて、自分たちというか身内しか知らないけど、奈良で頑張っている人や面白い人を探さなくてはいけないので……どうやって出会っていけばいいのかすごく考えさせられました。最終的には運営メンバーに紹介してもらうことによって解決できました。

はじめは5、6人ほどでスタートしたんですけど、今運営に10人ほど関わってくれていて。僕は結構思い付きで自分のやりたいことをどんどん実行していくところがあるんですけど、実行するまでの細かい手順やリスク面のケアなどを考えるのは僕の苦手なところでもあるので、自分の周りにそれをサポートしてくれるメンバーがいてくれるのはありがたいです。運営を支えてくれているメンバーにはすごく感謝しています。

 

 

 

観客として来ていた人同士が友達になったり、プロジェクトが起こったりすることが嬉しい

吉本さん

――「やっててよかった!」というエピソードを教えてください。

 

吉本:最初はPechaKuchaの観客として来ていたけど、プレゼンに興味を持って、「プレゼンをやってみたい!」という人が増えたことや、観客として来ていた人同士が友達になって、その人たちでプロジェクトが起こったりすることが嬉しいです。

 

岩城はるみさんと三原賢治さんによるALRIGHT BABYプロジェクト

奈良・生駒でベビーマッサージインストラクターとして活動している岩城はるみさんと、奈良市のデザイン事務所「amanojack design」の三原賢治さんによる「ALRIGHT BABY」プロジェクトがPechaKucha Night NARAでのプレゼンがきっかけで誕生。

 

ALRIGHT BABYステッカー

このプロジェクトは、「ALRIGHT」の意味どおり、「赤ちゃんが泣いても大丈夫だよ」「ベビーカーでも大丈夫だよ」という善意のサインのロゴマークを目に見える形で、子育ての非当事者側から先手を打って発信していこうというもの。ステッカーやキーホルダーなどで、意思を表すことができる。

 

 

吉本さん

吉本:そんな風に自分が知っているところでも知らないところでも、PechaKuchaがそういうきっかけになっているわけで。2年間やってきたことの1つの成果として感じています。これからも続けていったら、良い雰囲気がもっと広がっていくと思うので、頑張っていきたいと思います。

 

 

これからのテーマは"よりバラエティ"に。奈良県全域に広げていきたい

吉本さん
 

――これからPechaKucha Night NARAをどうしていこうと思っていますか?

 

吉本:これからのPechakuchaは、”よりバラエティに”っていうのが1つテーマです。いろんな世代や国の人にしゃべってもらえるようにチーム作りをできたら良いなと思っていますね。

これまでのイベント参加者は、20代とか40代ぐらいの方が中心です。

10代の高校生、中学生、小学生でも、自分の作ったものとか部活動を20枚のスライドに整理して話してもらうと、その人自身の中で整理できると思うんですね。それが「何かを伝えていく」ってていうことを考える良いきっかけになると思っていて。将来、大学なのか会社なのか分からないんですけど、自分を表現してくときにいいのかなって。「教育」っていうとちょっとおこがましいですけど、そういう機会になっていけば嬉しいです。

「海外の人が持つ文化から見て奈良ってどうなのかなぁ」とも思うんですよ。だからそういうことを知る機会は自分自身もほしいと思っています。

 

あと、場所について。次の開催地は、天理で6月16日(土)に開催するんです。去年は生駒での開催実績があるんですけど、奈良市以外の場所でもどんどん開催できたら良いなって思っています。

僕は香芝に住んでるんですけど、イベントをやりながら生駒や天理を知る機会をもらっているので。「イベントを開催しながらその土地のことを知っていって、またその土地のことを伝えていく」っていうことを自分のライフワークの中で出来たら良いなと思っているんです。それに共感してくれる仲間と一緒にその土地のことをもっと知っていければ良いなって。ぼくが提供していくというより、自分も一緒にやっていきたいなと。

このイベントを奈良県全域でやっていこうとすると年4回じゃ足りないので……いずれ毎月1回やっていって、「今月は御所」「今月は吉野」ってイベントを開催したいです。毎回100人規模でやる必要もないと思っていて、30〜40人希望ぐらいで、その時々でできる人でやっていければと思っています。

 

 

吉本さんが思う、奈良でがんばってる人

吉本さん

――吉本さんが思う、奈良でがんばっている人で、「この人のこともっと知りたいな」と思う人は?

 

吉本:ん〜……。(考え込む)

そういう人がめちゃくちゃたくさんいるのを前提でいうんですけど、たまに飲んだりする先輩の中でいうと、吉永大さんですね。吉永さんは、ソースコード(HTMLやJavaScriptなど)を書いてホームページ制作などを行っているフリーランスです。

 

吉永大さん

(写真:吉永大さん)

 

吉本:奈良県内だけに限らず、奈良県外の仕事も受けていて、新しい技術がどんどん入ってくる世界で、毎回自分が仕事する時に新しいチャレンジをしたり、技術を取り入れている姿勢がスゴイいなと。企業にいながらそういうことをやってない人もいっぱいいると思うんです。あと、地方でそういう働き方をしてるっていうのが、1つのモデルケースになるんじゃないかなって思うし、最先端の東京とか大阪みたいなとこにいなくても、遜色なく良い仕事ができているのは素晴らしいです。

どうしても毎回新しいことを取り入れるっていうのは、僕ら30代超えぐらいになってるとちょっとサボりだしてくることもあると思うんですけど、それができていてスゴイなって思いますね。

あと吉永さんは話しだしたら長い人。これは自分で言っていますけどね(笑)

クリエイターの人って話だしたら延々と長くなっちゃうんで、PechaKuchaのフォーマットを取り入れてるんですけどね。いわゆる「クリエイター」って感じの人だと思いますね。音楽が好きだとか、作るものに現れたりもするので、おもしろい人だなって思いますね。




 

奈良は"発掘しがい"のある場所――。

吉本さん

――吉本さんにとって、奈良ってどんな場所ですか?

 

吉本:「発掘しがいのある場所」ですね。

僕の奈良歴は5年ぐらいなんですけど、奈良はすごい歴史もいっぱいあるしそこで育ってきた人、商品、物がいっぱいありますし。ひとつフォーカスを当てるだけで、めちゃめちゃ時間かけて勉強しないと理解できないこととかあると思うんです。そういうものがいっぱいあるなぁって。

知ろうとした時に簡単にその素材が出てこないっていうことがおもしろいって感じますね。ネットで調べることも1つですけど、なかなか本質にたどり着けなかったりとか……。その不便さに燃えるというか、火がつくというか。(笑)「なんとか見つけよう!」ってなるので、おもしろいですね。

これは、自分のコピーライターという仕事の中でやってきた「広告」とかにも表れてるかなぁと思っていて。奈良でいろんな広告物とかポスターとかありますけど、「ワンキャッチじゃ伝えられないこと」がすごく眠ってるんですよね。そういう伝えたいものがいっぱいある場所です。

 

▼夏の古都・奈良を彩る大人気イベント「なら燈花会」のボランティア募集のキャッチコピー、「灯るい人、募集」も吉本さんが制作。

 

 

――吉本さんありがとうございました。

 

吉本:こちらこそありがとうございました。

 

吉本さん

 

 

 

 

編集後記

 

吉本さんのお話で印象に残ったのが、「奈良は発掘しがいのある場所」という言葉でした。日本の国はじまりの地である奈良には、古くからの歴史がたくさんあります。それは目には見えにくいものですが、偉人やその地のストーリーを読んだりしながら新しい発見をすることで、奈良をもっと楽しめるようになるかもしれませんね。

 

この記事を見て、

「吉本さんに会ってみたい」

「奈良の面白い人や頑張っている人のプレゼンを聞いてみたい」

「参加者のみなさんと交流してみたい」

と思った方は、6/16に天理で開催されるPechaKuchaに下のリンク先の記事から申し込んでみてはどうでしょうか?

 

 

天理駅前コフフン

▼PechaKucha Night NARA 天理イベント詳細ページ(この日はBBQも!)

 

6/16(土)プレゼン交流イベント「PechaKucha Night NARA」を天理市で開催!

 

 

 

記事制作:ならマガストーリークリエイトチーム

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